【寄稿】インフラは経済政策ではなく統治技術である。

 地方ではいま、通学や通院、買い物といった日常の移動そのものが、静かに難しくなりつつある。人口減少や高齢化により、バス路線やローカル鉄道の維持が困難になり、「移動できないこと」がそのまま地域の衰退につながる現実が、各地で生まれている。

 

 私は今回、初めて国政の場に立つにあたり、こうした「生活インフラ」を単なるサービスの問題としてではなく、国家の基盤そのものとして捉え直したいと考えている。交通、エネルギー、通信、防災といった分野は、それぞれが独立した政策テーマのように見えて、実際には密接につながっており、一体として再設計されるべき段階に来ている。 
 とりわけ交通政策は、その象徴的な分野だ。これまでの地域交通は「採算が取れるかどうか」という視点で語られることが多かった。しかし本来、交通インフラは単なる事業ではなく、物流、防災、国土保全、安全保障といった多様な機能を担う公共基盤である。たとえばローカル鉄道は、平時には通学・通院を支え、有事には物資輸送や避難路として機能する「多目的インフラ」でもある。
 今後は、収支だけで路線の存廃を判断するのではなく、「貨物輸送機能」「災害時代替輸送機能」「国土保全・防衛上の意義」といった観点から、地域交通の価値を多面的に評価する枠組みが必要だと考えている。そのうえで、鉄道だけに固執するのではなく、デマンド交通やライドシェアなども含め、地域の実情に応じた柔軟な移動手段を組み合わせる制度設計が求められる。
 同時に、日本のインフラ全体は老朽化という大きな課題にも直面している。高度経済成長期に整備された道路、橋梁、トンネル、鉄道施設は、今後一斉に更新時期を迎える。これまでの「壊れてから直す」事後対応型の管理から、「劣化を予測して先に手を打つ」予防保全型への転換は不可避だ。センサーやAI、ドローンといった新技術を活用し、限られた人員でも維持管理できる体制を整えることが重要になる。
 さらに、インフラ政策は防災・減災や安全保障とも直結している。大規模地震や気候変動リスクが現実化する中で、交通網や都市機能を「平時の効率」だけで設計する時代は終わった。災害時に機能する冗長性、首都機能のバックアップ、物流網の多重化といった「危機対応能力」を軸に、国家基盤を見直す必要がある。

 

 私は、日本保守同盟の一員として、成長と分配の両立、現実的な安全保障、そして次世代への責任ある投資という理念に共感している。その具体像の一つが、こうした「生活から始まるインフラ再設計」だと考えている。
 地域交通を一つの出発点として、経済政策、防災政策、国土政策を横断的につなぎ直し、「移動できること」「暮らし続けられること」「守られること」が当たり前の社会を取り戻す。そのための現実的で実務的な政策づくりに、これから取り組んでいきたい。

                               (渡部路夢参議院議員)

空想日報

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